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平成30年4月14日(土)新宿・常円寺にて、松本史朗先生による「『法華経』の仏教思想を読む」第1回の講座が行われました。

松本先生は、『法華経』の内容、特に散文と韻文において用いられる用語・単語や論旨から、『法華経』が、「方便品」の散文部分を最古層として、段階的に成立したと考えられるとして、その論拠や傍証を解説して頂きました。
まず「方便品」の散文部分では「一乗=仏乗」を説き、菩薩や大乗といった語は使用されておらず、これが『法華経』最古層の立場と考えられるとしたうえで、「譬喩品」ではこの両者が使用され「舎利弗(声聞)は過去世で菩薩行を行じた菩薩である」という理解から授記がなされており、これは菩薩だけが成仏できる、という差別的な大乗の考え方であり、「方便品」の散文部分の「一乗=仏乗」の立場から変化したものである。また、「方便品」の韻文部分も、小乗等の語を用いるため「譬喩品」の散文部分よりも後の成立と思われる、とお考えを示して頂きました。

また、「方便品」の韻文部分が散文部分よりも後に成立した理由として
・「Mahayana(大乗)」「bodhisattva(菩薩)」といった語の使用有無
・「仏智」について、散文部分では「難知」と説かれるが、韻文部分では「不可知」とされる。不可知性から難知性への発展は、一般的には考えられない
・散文部分では「聞法による菩提」が説かれるが、韻文部分の対応箇所では「六波羅蜜による菩提」が付加されている
・散文部分になく韻文部分だけにあるものとして、如来蔵思想的、感性的、秘教的、身体差別的な表現がある
などがあると解説して頂きました。

松本先生の解説は多岐に渡り、鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』のみならず、竺法護訳『正法華経』、闍那崛多・達摩笈多訳『添品妙法蓮華経』との違いや翻訳の事情などにも触れながら進められました。そして後世の付加と思われる部分の目的が「仏乗から大乗への思想的立場の変更、または一乗真実説から三乗真実説への変更」、「ヒンドゥー教的・非主知的立場からの『仏智』の神秘化」、「当時の一般民衆(ヒンドゥー教的価値観)に向けた仏陀の人格の熱烈的讃仰の追加」であると述べられました。

講義において松本先生は、『法華経』の後世に付加されたと思われる箇所とその理由・目的について、非常に論理的に解説して頂きました。その深い学識をご披露して頂き感謝に堪えません。誠に有難うございました。

第2回「『法華経』の仏教思想を読む」は、5月12日(土)14時から、内容は「「方便品」の読解「一乗」と「仏乗」の意味」です。
当日のみの受講(1回3,000円)も随時受け付けておりますので、本HP内の「受講のお申込み」からお申込みください。多くの皆様のご参集をお待ち申し上げております。(スタッフ)

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