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6月18日、新宿・常圓寺様にて布施先生による「日蓮教学史と諸問題」の第3回講義が行われました。
今回は、「初期日蓮教学史と本迹論」という講題のもと、「方便品読不読の問題」を中心に、後の一致論・勝劣論が展開する土壌が形成されていったことを細かく講義して下さいました。
宗祖日蓮聖人滅後、中老僧の天目上人が迹門無得道(『観心本尊抄』に立脚した主張)を老僧達に訴え、これが論争へと繋がったこと、六老僧の中、特に日興上人と日向上人は、宗祖・日蓮聖人が日常の勤行で方便品・寿量品を読誦されていたとそれぞれ反論されたこと、正法時代=小乗・権大乗、像法時代=法華経迹門、末法=本門という正像末三時 弘経を標榜した日興上人は方便品読誦の意義を所破・借文と説明したこと、日向上人は本門中心の立場を認めつつ方便品読誦の意味を説明する中で、中国天台教学で重用された「本迹雖殊不思議一」に着眼した形跡が見られ、これが後の「一往勝劣・再往一致」説の原型をなしたと考えられること、初期においては読誦を争点とする素朴な議論であった本迹の問題が、室町期には教理論の面から掘り下げられ極めて複雑な本迹論へと変容していったこと、などを詳細に解説して頂きました。
さらに、以上を承けて、今回のテーマを正確に受け止めるためには「日蓮教学と本迹雖殊不思議一の関わり」を改めて検証し整理しておく必要があると提言され、この点についての概要を解説して下さいました。非常に 貴重な情報を得ることができました。
また、読誦の問題を日蓮遺文を再検討する形で多角的に論じられ、たとえば、『月水御書』を取り上げて一部読誦の論点を見出し、あるいは、日蓮教学史上、読誦の問題に『末法一乗行者息災延命所願成就祈祷経文』(御祈祷経)の存在が大きく関わっていることを確認されるなど、多岐に渡り大変興味深い内容でした。
今回も、レジュメのみならず、先生が執筆された論文抜刷や、他の補助資料数種が配布され、講義後も研鑽を深めたい受講者への配慮が見られました。
次回からは、室町時代以降に展開した勝劣派各門流の本迹論について学んでいく予定です。連続受講の申し込みの機を逸した方の当日受講も受け付けております。貴重な講義ですので 、より多くの皆様のお越しをお待ちしております。
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