「法華仏教講座」第5回 「『開目抄』再考―摂受折伏を中心として―」報告

「法華仏教講座」第5回 「『開目抄』再考―摂受折伏を中心として―」報告
2022年8月27日 commons

令和4年度前期法華仏教講座の第5回講座が、八月二十七日(土)午後四時半~二時間の枠で執り行われた。講師は日蓮仏教研究所主任の都守基一先生。講題は「『開目抄』再考―摂受折伏を中心として―」。当日は、常円寺様祖師堂地階ホールを久々に対面式講義会場として使用させていただき、Zoomによる実況配信を同時に行うハイブリッド型で講義が開催された。
都守先生は、日蓮聖人遺文中もっとも長編の『開目抄』は、三大部の一つであり、唯一、譬喩による命名の特別な書であることを最初に指摘され、同書で示される重要法門の数々の内、今回は特に、今成元昭氏らによる「平成の摂折論争」を承け、『開目抄』を中心に、摂折論についてご極めて詳細に講じてくださった。
先ず、『開目抄』では、『摩訶止観』『摩訶止観輔行伝弘決』『法華文句』『涅槃経疏』『涅槃経』が引用されながら摂受・折伏が細論され、末では、日蓮聖人が念仏禅宗を呵責(折伏)することによって、為彼除悪、日本国の諸人の父母となり、後生に大楽を受く、と結ばれていることを正確に読み解いてくださった。
また、講義では、「常不軽品のごとし」の文が『開目抄』真蹟に存したか否かという問題を検討され、他の日蓮聖人遺文に見られる摂折論の変遷や、『観心本尊抄』で示された末法における本化地涌四菩薩の摂折論(折伏―賢王―誡責愚王、摂受―僧―弘持正法)などについて、極めて貴重な所見を拝聴させていただけた。
都守先生が今回、日蓮聖人のいう摂受・折伏について、学術的に今日の最高水準で明らかにされた功績は甚大である。その詳細は、近々に論攷として公にされるであろう。
当日は、多くの聴講者の参加がみられ、先生の温厚誠実なお人柄や明快な語り口に誘われるかのごとく、質疑応答まで含め頗る盛会となった。(スタッフ)