講座「『法華経』『法華文句』講義」第33回講座報告

講座「『法華経』『法華文句』講義」第33回講座報告
2021年2月22日 commons

第33回となる今回は、2021年2月22日(月)にオンライン実況講義で開催されました。テキストの『法華文句(Ⅱ)』では358頁8行目「為求声聞人説四諦法」、副教材の『法華経』(真訓)では91頁5行目「声聞を求むる者の為には~」からで、漸教の教えの段です。『法華経』の中心となる思想の一つは三乗方便・一乗真実で、序品には三乗の内容が簡潔に整理されています。講義では、まず声聞・縁覚・菩薩と三乗の教えについて、講義メモを参照しての詳しい説明がありました。

 

〇 声聞はシュラーヴァカ(śrāvaka)の訳で、声を聞く人の意である。本来は在家・出家の区別なく、仏の教えを聞く人を声聞と呼んだが、在家は奉仕する人(ウパーサカ)を呼ばれるようになり、声聞は出家の弟子を指すことになった。声聞に対する教え(声聞乗)は、初転法輪時の思想で「四諦八正道」にあたる。

〇 縁覚はプラティエーカ・ブッダ(pratyekabuddha)の訳で、独覚とも訳され、独自に悟った人の意で、辟支仏はその音写語である。声聞のように共同生活するのではなく、森林などで孤独な修行をして独自に悟り、しかも人々に教えを説かない修行者を指す言葉として生まれたと推定される。縁覚に対する教え(縁覚乗)は、釈尊が菩提樹下で悟られた「十二因縁(縁起)」で、煩悩・業・苦の連鎖を明かしている。

〇菩薩はボーディ・サットヴァ(bodhisattva)の音写語で、悟りを求める生きもの、悟りを本質とする者の意である。もともと、ゴータマ・ブッダが成仏する以前の姿を菩薩と呼んだが、仏の前世や、過去仏の成仏以前にまで用法がしだいに拡大されていった。菩薩に対する教え(菩薩乗)は、大乗経典『般若経』において説かれた「六波羅蜜」で、布施・持戒・忍辱・精進・禅定の五つの行為も「空」の思想に裏付けられ、はじめて完成するとされる。

 

つづいて、二万も続く日月灯明仏が「頗羅墮」という同じ姓を持つ、という段を説明された。吉蔵の『法華義疏』から引いて、頗羅墮とは六姓婆羅門の中の一つで「利根仙人」と訳す。また弁才や満正とも訳される。この日月灯明仏の二万の最後仏には八人の子供(八王子)がいて、『文句』では釈尊の一子(羅睺羅)と比べている。一子は「一道清浄」に八子は「八正道」に当てて、その義は同じとしている。

この日月灯明仏は、今の釈迦牟尼仏の同じく大乗経の無量義を説いた後に、三昧に入って東方万八千仏土を照らした後に、聴聞衆の中の妙光菩薩にたいして「妙法蓮華経」を説く。そして説き終わった後に「今日の中夜に涅槃に入る」と預言して、次の仏として徳蔵菩薩に授記を与えると、中夜に無余涅槃に入られた。この一連の流れは、曾(過去)と当(未来)が同じ事だと明かしている、として次の六点を挙げている。「因人(説法の対象)」、「説法の名(無量義)」、「時節(六十小劫)」、「涅槃の予言」、「授記(徳蔵菩薩へ)」、「「滅後に弟子が経を弘通する」、以上の様相は同じであり、「往(過去)を引きて今を証」している。

また妙光菩薩は、日月灯明仏の八子の師匠になって皆を成仏させるが、その八子の最後に成仏した者が「燃灯仏」という。燃灯仏は、釈尊が前世でスメーダという名の青年だった時に、スメーダに「やがて悟りを開き仏になる」と授記して、「菩薩(やがて仏陀に成る者)」という名の始まりをつくった仏である。八子の最後に成仏した燃灯仏から授記されて釈尊が成仏したので、妙光は「釈尊の九世の祖師」といわれる。今の文殊菩薩は昔の妙光に当たるため、「孫(釈尊)は今成仏し、師祖(文殊)は弟子となる」と『文句』では述べられている。また「中夜」については六時の一つで、初夜(午後6時から10時頃)・中夜(10時から2時頃)・後夜(2時から6時頃)、昼は、晨朝・日中・日没に分ける。合わせて「六時」という。

 

講義は最後に、「当説大乗経、名妙法蓮華経、教菩薩法、仏所護念」が六瑞中の四瑞に当てられるとして、「当説大乗(説法瑞)」「名妙法蓮華経(雨花瑞)」「教菩薩法(衆喜瑞)」「仏所護念(地動瑞)」について説明されて、終了しました。『法華文句(Ⅱ)』では、367頁の終わり、『法華経』では97頁の終わりまでです。

次の第34回は、3月29日(月)午後6時30分から、オンライン実況で開催いたします。受講の皆さまは、事前に送付するメールのURLをクリックしてご入室ください。以上、宜しくお願いいたします。 (担当スタッフ)