講座「承久の乱から考える日本仏教」第2講オンライン講座

講座「承久の乱から考える日本仏教」第2講オンライン講座
2020年5月19日 commons

令和2年5月19日(火)、菊地大樹先生による法華コモンズ仏教学林2020年度後期【歴史から考える日本仏教⑤】〈承久の乱から考える日本仏教〉第2講が、前回同様、Zoomの機能を用いた撮影による動画で配信されました。

今回は、院政の特徴や「承久の乱」の歴史学的意義について講じられ、「院政から見た鎌倉幕府の成立」と「後鳥羽院政の成立」について掘り下げて論じてくださいました。

先ず、前回の補足として、院政期における院の専制的なあり方を、白河院の「天下三不如意」の仰せを取り上げる『平家物語』巻第一の叙述を軸にご教示いただきました。

次いで、「院政から見た鎌倉幕府の成立」をテーマとして、これを、(1)後白河院と源頼朝、(2)武家政権と院政の各側面から細説してくださいました。

その中で、後白河天皇親政時に発された「保元の新制」七ヶ条の詳細、その中に見られる王土思想、また、当時の学侶・堂衆・衆徒・大衆についてや、後白河院の持経者としての性格、あるいは後白河院が法華経能読において果たした役割の大きさ。そして、保元三年(1158)の後白河院政開始と、平治の乱で覇権を確立した二条天皇から、六条天皇、そして高倉天皇へと移行する様相、また、平氏政権の確立の様相、鹿ヶ谷事件(1177)、治承三年(1179)のクーデター、安徳天皇即位、後白河院政復活から、治承・寿永の乱の展開など。更に、『吾妻鏡』や『愚管抄』の一節を取り上げ、源頼朝政権の特徴に言及され、頼朝が軍事支配権を拡大していく様相や、他の武家と頼朝の院政との距離感の相違、追討院宣発給に関する頼朝のスタンス、そこから守護地頭が設置されていく様を『玉葉』の記述によって解説されるなど、圧巻の講義が展開されました。『玉葉』文中「日本国第一の大天狗」についての先生のご解説は大変興味深いものでした。

更に、先生は、「後鳥羽院政の成立」について、(1)神器なき践祚、(2)後鳥羽院政期の朝廷、(3)源実朝と後鳥羽院──という各側面から丁寧に講じてくださいました。

そこでは、後鳥羽天皇の即位と譲位による院政の開始、九条兼実や頼朝の位置、後白河院による抑制と崩御、また、征夷大将軍に補せられた頼朝の上洛と東大寺総供養への臨席、血縁関係から読み解く後鳥羽院政の特徴、建久7年のクーデター──などが、ポイントとして語られました。また、後鳥羽院の文化人的側面、乗馬・狩猟・水練・蹴鞠などを得意とした身体的能力の高さや、「節会習礼(せちえしゅらい)」など儀式復興への尽力に触れ、後鳥羽院政期の朝廷の特色が論じられました。
続いて、「源実朝と後鳥羽院」について、頼朝没後に尼(尼二位・二品禅位)となり北条氏の後盾と後家の権威によって幕府を支え続けた北条政子の存在をキーとして示されながら、比企の乱(1203)による頼家の失脚、比企氏・畠山氏・和田氏の粛清による北条氏の地盤確立、後鳥羽院の源実朝支援、健保7年の実朝暗殺、四代将軍・九条道家男頼経擁立の意味、道家姉妹立子(→順徳妃)が設けた皇子(→仲恭天皇)の存在、そして、承久3年(1221)に、後鳥羽院とともに幕府攻撃計画のため順徳天皇が仲恭天皇に譲位し、道家が摂政になる………など、承久の乱が惹起するまでの様相を極めて丁寧に解説してくださいました。

斯くして、今回、菊地先生は、次のように講義をまとめられました。

○院政の構造
・分裂弱体化する中世王権を安定的に維持するために、国制とは別の論理=家父長制という社会制度を基盤に創出された構造であること。
・太政官制を中核とする王朝国家に依存しながらも、政治過程に即し、且つ制度外において諸勢力を糾合したこと。

○承久の乱の前提
・通史的には、鎌倉幕府の成立を画期とみるのが一般的だが、白河に始まる院政の系譜は矛盾を抱えつつも、後鳥羽院政まで連続していること。
・坂井孝一氏が強調するポイントの一つは、後鳥羽院は必ずしも「倒幕」を意図していたのではなく、あくまで北条義時を排除して、伝統的に院政の権力基盤を支えてきた武力の統括者として幕府をコントロール下に置こうとしたこと。

○かつての頼朝の幕府は、後白河院政下の内乱状況から、なし崩し的に成立してきた軍事政権。しかし、その過程で東国を中心とする武士に支えられながら、統治権的な側面を段階的に強化。この歴史的な発展を十分に理解できず、伝統的な院政の構造化に収め取ろうとしたところに、後鳥羽院のアナクロニズム的な誤算があったと思われること。

今回も、充実したご講義で、瞬く間に時間が過ぎ去りました。院政期や鎌倉時代の世界にタイムスリップしたかのような感覚を味わえました。

この第2講も、1ヶ月間アクセス可能な動画配信です。この時代を掘り下げて知りたい方、日蓮聖人についての理解を深めたい方には、是非とも受講をお薦め致します。大変貴重な機会です。

なお、菊地先生は、この直後、第2講・補講を受講者に動画配信してくださいました。(スタッフ)