講座「『法華経』の仏教思想を読む」第6回講座報告

講座「『法華経』の仏教思想を読む」第6回講座報告
2018年9月8日 commons
平成30年9月8日(土)新宿・常円寺にて、松本史朗先生による「『法華経』の仏教思想を読む」第6回「「薬草喩品」と「常不軽菩薩品」の考察」の講座が行われました。
松本先生は「薬草喩品」について、鳩摩羅什訳では梵語原典よりも三乗の格別性に力点を置いて翻訳を行っており、梵語原典には対応する語の無い「各有差別」や、梵語で「種類」から漢語で「種性」への訳の変更、「如其種性」に対応する梵語の考察などにより、梵語原典「薬草喩品」で「劣・勝・中の草木・灌木・薬草・森林樹」とある三乗格別説に、鳩摩羅什がさらに瑜伽行派の三乗格別的な考え方を訳文に持ち込んでいると思われる、と述べられました。
また、その後松本先生は「常不軽菩薩品」の意義として、常不軽の解釈として「常に、軽蔑された者」と「常に、軽蔑されない(と語る)者」の二種類があること、常不軽菩薩が比丘達に呼び掛けた言葉である「我深敬汝等、不敢軽慢。所以者何、汝等皆行菩薩道、当得作仏」の「汝等皆行菩薩道、当得作仏」は梵語原典に依ると「あなたたちはすべて、菩薩道を行じなさい。そうすれば、あなたたちは、如来・阿羅漢・正覚者になるでしょう」と訳すべきであり、「菩薩道を行じて、如来になるでしょう」とする『妙法蓮華経』とは解釈の違いが出てくることを解説して頂きました。
松本先生は語句やその意味の厳密な分析から『法華経』の新古層を判別し、初期の『法華経』の記述や後世で付加されたと思われる箇所や意図を読み解くという、非常に緊張感のある講義を展開して頂きました。松本先生に改めて感謝申し上げます。(スタッフ)