講座④「『法華玄義』講義」第12回講座報告

講座④「『法華玄義』講義」第12回講座報告
2017年3月27日 commons

平成29年3月27日(月)、菅野博史先生による第12回目の「『法華玄義』講義」が行われました。今回は前回の「迹門の十妙(1)—境妙」についての講義で、27人が参加しました。
前回は、「妙」の解釈の内の通釈、共通解釈の部分で、今回始まった「迹門の十妙」と続く「本門の十妙」は別釈として『玄義』の五割強を占める大きなテーマとなっています。
その内、「迹門の十妙」は境・智・行・位・三法・感応・神通・説法・眷属・利益との十の観点から、爾前経に比べ迹門を妙とするものです。
まず、先生は「迹門の十妙」の構成を俯瞰され、標章(名称の紹介)、引証(経文からの例示)、生起(十妙の次第の根拠)、広解(十妙それぞれの解説)、権実を紹介し、続いて広解の「境妙」に入っていきました。
ことに上記の内の生起では、「境・智・行・位・三法」の五つが自行にあたり、「感応・神通・説法・眷属・利益」が化他にあたるとのことです。そこには仏教の「感応」という思想があります。すなわち、衆生の「感」に応じて仏の「応」があり、衆生の感は自行による衆生の機の熟成によるというものです。十妙前段の五によって衆生の機が熟したところに「感」が生まれ、それに「応」じ、仏の神通・説法があり、衆生が眷属となり、大利益を得るというものです。これの感応道交という思想は他の宗教にない仏教の特色とも言えるそうです。
続いて、『玄義』では、内容としての広解の「境妙」として「十如是」「十二因縁」「四諦(八正道)」「二諦」「一諦」の概説があります。これは仏教全体の境地を明かすもので、次にその一々の境地について、蔵・通・別・円の観点から分類・解釈を加えていきます。
例えば、円の十二因縁は「不思議不生不滅の十二因縁」となり、蔵・通・別の十二因縁を「麁」とし、円を「妙」とします。ただこれは絶待妙の視点から捉えられてもので、その際、十二因縁は「開麁顕妙」され、蔵・通・別の十二因縁が蘇生し、かつ「常楽我浄」として観心されることとなります。
智顗はそのように『妙法蓮華経』は仏教全体の「麁」、粗さ、相互矛盾するような要素を開会し、総合し、かえってあるべき位置に位置付け、蘇生させるものと捉えているのです。
次回は、新年度の講義となり、4月24日(月)18:30より講題は「迹門の十妙(2)−智妙・行妙」となります。皆さま奮ってご参加ください。
また新年度より『法華玄義』上・中・下(第三文明社)の他に、『法華玄義を読む—天台思想入門』(大蔵出版)も教科書となりますのでご留意ください。(文責:編集部)