講座②「日蓮教学史と諸問題」第5回講座報告

講座②「日蓮教学史と諸問題」第5回講座報告
2016年8月20日 commons
8月20日、新宿・常圓寺様の設立された日蓮仏教研究所にて、布施先生による「日蓮教学史と諸問題」の第5回講義が行われました。 雨のため、この季節にしては珍しく過ごしやすい気温の中、仏教研究所内においては熱のこもったホットな講義が執り行われました。
前回より、各門流の教学についての講義となり、今回のテーマは「円光坊日陣師と日陣門流の教学」でした。
近現代の日陣門流の歩みを紹介された後、日陣師の略伝と日陣門流の教学に関する研究史を紹介されました。そして、日蓮教学史の中で、本格的な本迹勝劣論を宣揚した先駆けともいわれる日陣師の所説の特徴を「本迹実相勝劣」中心に概説され、ついで、日陣門流の門流史・教学史について、ポイントを押さえながら解説して下さいました。中でも、本国寺五世・日伝師との「陣伝論争」については、限られた時間ながらも、端的に 、その本質がどこあったか、どのように論争が展開していったのかを要領よく説明して下さいました。また、日陣門流の流れや、日陣門流の中でも特に教学に精通し業績を残した「陣門四哲」(侍従阿闍梨日現師・菩提心院日覚師・智門院日求師・本有院日相師)など、非常に興味深く学ぶことができました。
更に、布施先生は「諸問題の検討」という項目を立てて講義を進められ、日陣師のいう本迹実相勝劣の意味、教相と観心についての認識、題目論や五重玄義観の特徴、上行菩薩観、本因下種と本果下種の問題、本有院日相師の学説の特徴などを取り上げ、今後の研究課題をも含めて細かく論じられました。
布施先生のお話で特に印象的だったのは、日陣師は、『開目抄』 『観心本尊抄』を中心とする宗祖日蓮聖人の遺文を中心に研鑽を深められ、宗祖の教学が教相主義であることに着目して本迹論の特徴を掴み取ろうとされており、中国・日本の天台教籍にも精通され、それらを視野に据えた上で、宗祖教学の特色を浮かび上がらせようとしていたということです。中でも、先生が読み上げられた「消息」(「与妙俊比丘に書」)の書き出しは非常に印象的でした。「朝夕ハ元祖(日蓮)の御筆ヲ思惟候テ、我心ヲモアキラメ、人ノヒヅミヲモナヲサルベク候」。日陣師の純真な信仰が窺い知れました。
布施先生の講義は、限られた時間を最大限に使って、どのテーマも細部まで詳しく解説して下さいます。また、一回ごとにテーマを区切って講義して下さっており 、途中から参加した場合もしっかりと学ぶことが出来ます。
次回の講義は9月17日を予定しています。皆様の参加をお待ちしています。